大分でホーバーが復活?
かつて大分空港と大分市内を結んでいた旧「大分ホーバーフェリー」が2009年に廃止されましたが、大分県が多額の税金を投入してホーバークラフトが復活することになりました。
船体や設備を大分県が負担し、運航を民間企業である「大分第一ホーバードライブ」が担う、いわゆる上下分離方式です。
当初2023年度中の就航を目指しましたが、2025年4月現在、週末の別府湾周遊便を運航しているだけで肝心の空港アクセスとしては運航していません。習熟訓練中の事故が多発しており、操縦士の訓練や安全対策に時間がかかっているようです。
ところで「Hovercraft」は「ホバークラフト」なのか「ホーバークラフト」なのか?ですが、発音としては「ホバークラフト」の方が近いようですが当ブログでは運航会社が「ホーバー」と名乗っているのと大分では「ホーバー」で定着しているようなのでそれを尊重したいと思います。
ホーバーターミナルおおいた
呑み鉄たこちゃんは別府湾周遊便に乗船しました。
大分のターミナルは西大分駅から1.6km。旧「大分ホーバーフェリー」とは異なる場所です。歩いていけない距離ではないですが、荷物があると辛いかと思います。
後で大分港から「商船三井さんふらわあ」に乗船するのでフェリーターミナルに寄り道してコインロッカーに荷物を預けました。もちろん有料ですがこれで身軽になれました。小が200円なので駅とかに比べると安いと思います。
停泊中の「さんふらわあ ごーるど」
ホーバーが訓練?していました。
個人差はありますが西大分駅から徒歩で25~30分程度です。
大分交通の「春日浦」バス停から徒歩10分との事ですが、バスが1時間に1~2本程度しかないので注意が必要です。
空港行きが就航したら最初の3か月は県が大分駅からバスを運行する計画のようです。
館内は大分県の木材を多用した内装になっていました。
切符はネットで買うことが前提なのか、カウンターは小さいものでした。
ターミナルで長時間待つという状況は少ないと予想しているのか、座れる椅子は多くありませんでした。
この日の揺れは「レベル1」との事。少し波があった方がどれ位揺れるのかが体験できるので波がある方がよかったかも?
ホワイトボードには運航情報が掲示されていました。
(重箱の隅をつつきたい訳ではありませんが、タクシーではなく船の会社なんだから「運航」と「運行」の使い分けは正しくして欲しいと思います。)
別府湾の海図(コピー)
(海図をカラーコピーしても船上で海図としては使用できません。)
屋上に展望スペースもあり、ホーバー3隻が揃っていました。
謎のスロープ
大分のターミナルには450台分の駐車場があるそうです。神戸空港~関空の高速船は駐車場利用者が多いようですが、大分は空港周辺の駐車場が安いのでどうなるでしょうか?
2番船「Banri」に乗船
呑み鉄たこちゃんは15時30分発の周遊便に乗船しました。
運賃はアプリ決済だと2000円、現金だと2500円でした。アプリ決済はLINEのみなのが激しく不満です。個人情報が漏れまくりのアプリは好きではありませんが、人間関係を円滑にするための最小限度の利用にしたいものです。
乗船者はかなり少ない様子・・・座席は自由席なので混んでいるなら並んだほうがいいのですが、受付で並ばなくても全員窓側に座れる人数しかいないと聞いていたのでのんびり乗船しました。
2番船「Banri(ばんり)」
豊後の三賢と称されている1人の「帆足万里」さんから命名されたそうです。誰かわからないけど・・・(笑)
前方から乗り込むのは斬新ですね。
船内の様子です。2-4-2列の座席配置です。
座席です。シートベルトの着用が必要です。
ドリンクホルダーがありました。コンセントなし。足元に救命胴衣があるので荷物を置いたり足を伸ばすことはできません。
荷物棚は座席近くにはなく、前方の乗船口の所にありました。(下船時に撮影)
ちなみに船内にトイレはありません。報道によるとトイレの設置を検討しているとか?(時間稼ぎのような気も・・・?)
残念?視界不良の周遊便
改札で手作り感一杯の案内図を頂きました。
ホーバーの下の黒い部分(スカートと呼ぶそうです。)に空気が入って膨らみました。大分ターミナルを出港!
「さんふらわあ ごーるど」の近くを通過!
港外へ出ます!視界不良で残念です。
乗り心地ですが、旧「大分ホーバーフェリー」よりも船体が大きくなって客室は広くなり、音は静かになったように感じました。海が穏やかだったので揺れは全く気にならず快適でしたが、波があるときの揺れがどうなるかがわかりませんね。旋回するときは横向きに滑るような感じでした。
途中、操縦士さんがハシゴから降りてきて「何か質問があればどうぞ~」との事でしたが、誰も質問していませんでした。
乗る時間は30分だけなのであっという間に大分へ戻ってきました。
上陸の瞬間!
下船口では整備士の方達が温かく迎えてくれました。挨拶や写真撮影で接客サービスを頑張っていました。操縦士や整備士にも入社前に宿泊施設で接客の研修を行っているだけの事はあると感じました。
格納庫の1番船「Baien」(ばいえん)
視界が悪く、景色が全く見えなかった「別府湾周遊便」でしたが、景色を見たくて乗船したのではなく、ホーバーに乗るために乗船したので目的は果たせたと思います。
現場の皆さんが就航に向けて頑張っているのも伝わってきました。
日本でここだけ、世界でも2か所でしか乗れない珍しい乗り物「ホーバークラフト」を体験できて大満足でした。
ただ、天気が悪かったとはいえ、週末限定の「別府湾周遊便」が既にガラガラに空いていたのが心配ですね。この周遊便の売上げは数万円!絶対大赤字です。
まとめ:就航延期で厳しい状況!
大分空港の海上アクセスとして一旦廃止されたにもかかわらず、大分県の上下分離方式で復活したホーバーに乗船してきました。乗り物が好きな個人としては実際に乗れて嬉しく、現場の皆さんはとても親切で応援したい気持ちではありますが、現実は厳しいようです。
訓練や安全対策の事情で本来の大分~空港間での運航は2023年度中の予定よりも大幅に遅れており、「別府湾周遊便」として限られた便数しか営業航海を行っていません。旧「大分ホーバーフェリー」より船体が大型化しており、空港側の陸上航走路がS字カーブで操船の難易度が高いようです。
問題を解決して空港への営業航海が始まったとしても、大分駅~空港間のバスが約60分なのに対し、ホーバーの所要時間が30分、乗り換え10分、大分のターミナルから市街地までバスで10分としても、うまくいっても10分程度の短縮にしかなりません。大きな荷物を持っての乗り換えは敬遠される傾向にあります。
また、空港バスのように小型機の航空便にもきめ細かく接続できる運航ダイヤ設定も難しいでしょうから、利用する航空便によっては待ち時間が増えます。そして、バス会社が運転手不足の中、空港バスのライバルになるホーバー連絡バスを運行できるのか?という疑問もあります。
旧「大分ホーバーフェリー」が廃止されたのも、大分空港道路の開通で空港バスがスピードアップして時間差が小さくなり、しかも運賃が高くて利用者が減ったからではないでしょうか?こんな事は検討段階から判りきっていた事で、お役所特有のトップに忖度して結論ありきの検証・分析が行われたようにも思えます。
県はホーバーそのものが観光の目的となるような期待をしているようですが、ホーバーは景色や乗船そのものを楽しむには不向きな船で、以前よりは改善されているとはいえ決して乗り心地の良い乗り物ではありません。開業効果は極めて限定的であるといえるでしょう。
ホーバー復活のために多額の大分県の税金が使われています。
- 荒天や視界不良のリスクが高い海上アクセスが本当に必要だったのか?
- 外国でしか建造できないホーバーを採用する合理性はあったのか?外国製だとコストが高騰するだけでなくメンテナンスが大変であることは容易に想像できる。
- 空港バスをより充実されるように支援したほうがよかったのではないか?
- ホーバーに税金を使うより地方のバス路線を支援する方が有意義なのではないか?
と思う事は沢山あります。利用者の一人として交通機関の選択肢が増えるのは嬉しいことですが、はたして費用対効果があるのか疑問に感じます。
大分第一ホーバードライブさんは県との契約で20年は運航を続ける必要があり、赤字補填は行われないとの事です。果たして事業として成り立つのか、素人ながらに心配であります。報道によると社長さんはこの点を強く認識されており、周遊等の企画を行っていく方針だそうです。厳しい船出であることは確かですが1人でも多くの人に選ばれるホーバーに成長することを期待しています。
ホーバー選定の経緯は大分県のサイトで読めます。